「猫が30歳まで生きる時代へ」そんな夢のような話が、今、現実になろうとしています。
15歳以上の猫の約80%が罹患すると言われる「慢性腎臓病」。これまでは「いかに進行を遅らせるか」が治療の限界でしたが、近い将来、病気そのものの改善や予防を叶える可能性のある薬が登場します。
今回は、その鍵を握るタンパク質「AIM」と、最新の治療薬のお話です。
研究の道のりは26年。一人の医師の発見から
哺乳類には血液中に「AIM」というタンパク質を持っていて、それを1999年に発見したのが宮﨑徹(みやざき とおる)先生です。そのAIMというタンパク質の役割を見つけるのに長い年月がかかったそうです。
宮崎先生は元々は人間のお医者さんで、難病である腎臓病を治すための研究をされていました。
ある講演をきっかけに獣医師から「ほとんどの猫が腎臓病で命を落とす」と言うことを聞き、「猫のAIMに何か原因があるのではないか」と考えたのが、始まりだったそうです。

研究の結果、猫のAIMというタンパク質は機能不全だったことを発見。以来、発見から現在まで26年もの月日をかけ、猫を救うための研究を続けてこられました。「諦めなければ道は開ける」という言葉を体現するような、凄まじい執念と情熱です。
AIMというタンパク質の正体
この「AIM」というタンパク質。一体どんな働きをしているのでしょうか。
例えるなら「粗大ゴミに貼るシール」役の割だそう。
- 体の中にゴミ(死んだ細胞など)が出ると、AIMが台紙から剥がれてゴミにピタッと貼り付く。
- シールが貼られることで、お掃除屋さんの「マクロファージ」が「あ、これはゴミだ!」と認識できる。
- マクロファージがゴミを食べて掃除し、腎臓が綺麗に保たれる。
しかしネコ科の場合、このシールが台紙から非常に剥がれにくい性質を持っています。いわば「シールはあるのに、ゴミに貼れない」状態。
そのせいでゴミがどんどん溜まってしまい、やがて腎臓のフィルターが詰まって機能が低下していくのです。
待望の新薬「FeliAIM(フェリエイム)」
そして、ついに誕生した薬の名前が「FeliAIM(フェリエイム)」です。
今年の2月22日に発表されたこの名前は、一般公募で決まりました。
- Felis: ラテン語で「猫」
- AIM: タンパク質の名称
- Felice: イタリア語で「幸福、喜び」
この3つの意味が込められています。研究所そのものが多くの飼い主さんの寄付によって設立された背景もあり、まさに「みんなの願い」が形になった名前と言えますね。
薬は経口ではなく、「注射」で直接届ける理由
この新薬は、口から飲むのではなく、「注射」で投与されます。
その理由は「AIM」がタンパク質だから。タンパク質は口から摂取すると「アミノ酸」に分解されてしまうため。それではお掃除の目印になる粗大ゴミシールの役割を果たせなくなってしまうのです。
研究では、注射で何回か打ってしまえば、そのあとは状態が良くなるという研究結果も出ているようです。
値段や何回打ったらいいのかなど、気になることはたくさんありますが、その詳細はまだ明らかではありません。
決して安いものではないかもしれませんし、定期的な通院が必要になるかもしれません。それでも、「選択肢がある」ということ自体が、私たち飼い主にとっては大きな希望ですよね。
ここで「AIM配合のフード」や「AIMサプリ」はどうなの?と疑問に思う方もいるかもしれません。
フードやサプリの場合は、AIMそのものを入れるのではなく、「猫が持っている、剥がれにくいAIMを剥がれやすくする成分(A-30など)」を配合しているそうです。若いうちからフードで「ゴミ出し」を助けておけば、将来の腎臓病リスクを減らせる、というわけですね。
ちなみに、手軽に試せる『AIMのちゅ〜る』も市販されています。
我が家でも以前試してみたのですが、あいにくウエットが苦手なうちの子たちは、少し舐めただけで『もう要らない』と断られてしまいました……。

ですが最近、SNSで『水のように薄めてスープ状にして飲ませる』という方法を見かけました。これなら水分補給も兼ねて美味しく食べてくれるかもしれないので、今度またレオンで再挑戦してみようと思っています。
- 注射(FeliAIM):「動けるAIM」を外から直接補う。
- 食事: 今ある「動けないAIM」を働かせるように手伝う。
糖尿病をかかえているドロンへの希望
実は、この新薬は糖尿病など他の持病を抱えている猫にとっても、大きな意味を持つのではないかと私は考えています。
現在、「糖尿病と腎臓病を併発している」ドロンのような猫の場合、その食事管理は非常に困難です。
- 糖尿病の食事: 血糖値を安定させるため、「高タンパク・低炭水化物」が理想。
- 腎臓病の食事: 腎臓への負担を減らすため、「低タンパク」が基本。
このように、理想とされる栄養バランスが「真逆」なのです。今は「腎臓」を優先して食事管理をしています。
しかし、もしAIMの注射で腎臓のゴミを定期的に掃除できるようになれば、この制限が緩和されるかもしれません。「腎臓のフィルターが詰まる心配」をAIMで解決できれば、糖尿病に特化した「食事療法」を選択できるようになる。

すぐには変更できないかもしれないけれど、これが出来るようになれば、単に寿命を延ばすだけでなく、病気と闘う猫たちの「QOL(生活の質)」を劇的に向上させる可能性を秘めているのです。
「30歳」という未来を、後悔なく迎えるために
「猫の寿命は30歳」こんな時代が来るなんて… 考えもしませんでした。私が子供の時に飼っていた猫は10年も生きていません。その時代は今みたいに猫の健康を考える時代ではありませんでした。
現在の状況は2026年4月に申請予定、来年には承認されるのではと言われています。この薬が正式に承認されれば、世界的なニュースになるのは間違いありません。

我が猫の命が間に合うのか、その治療を受けられる体力が残っているかどうか分かりませんが、もし間に合うならば、やはり受けさせてあげたい。
できることなら穏やかに最後を過ごしてもらいたい。そう願っています。
技術の進歩に感謝しつつ、現状維持できるように、今できるケアを精一杯続けながら、その「新しい扉」が開く日を待ちたいと思います。
※この記事は2026年4月現在、主に株式会社 IAM CAT、IAM(一般社団法人AIM医学研究所)の公式情報、および宮﨑徹先生のインタビュー記事の内容を元に、個人の感想を交えて作成しました。最新の情報については、ぜひ公式サイトも併せてご確認ください。


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